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PS顧問 2026年8月31日

「自社ツールだけでは足りない」を武器に変える。専業ツールベンダーのためのアライアンス戦略

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「自社ツールだけでは足りない」を武器に変える。専業ツールベンダーのためのアライアンス戦略

本記事は 内田 智英(株式会社アイリッジ ビジネスパートナー部 副部長 兼 アライアンス戦略グループ グループ長)の寄稿によるものです。

MA、会員管理、ポイント、決済、CRM、セキュリティ、AI――。

現在、企業向けのITサービスには、それぞれの領域に特化した優れたツールやサービスが数多く存在します。

一つひとつのプロダクトを見ると、非常に高い専門性を持っている。

しかし、顧客企業が抱えている課題は、必ずしも一つの領域だけで完結するものではありません。

「MAを導入したい」

「ポイントシステムを刷新したい」

「会員基盤を整備したい」

という相談の背景には、

「顧客との接点を増やしたい」「LTVを高めたい」「デジタルとリアルをつなぎたい」「顧客データを活用したい」

といった、より大きな事業課題があります。

そう考えると、専業ツールベンダーにとって、自社だけですべてを解決しようとする必要はありません。

むしろ、自社にはない強みを持つ企業と組むことで、顧客に提供できる価値を広げ、結果として自社の事業そのものを拡大できる可能性があります。

私はこれまで、MA、会員システム、決済、セキュリティ、AIなど、様々な領域のツールベンダーを含む50社を超える企業とパートナーシップを構築してきました。

その経験から感じているのは、

「自社ツールをどう売るか」だけではなく、「自社ツールを何と組み合わせれば、新しい価値を作れるか」を考えることが、専業ツールベンダーのアライアンス戦略では重要だということです。

「代理販売パートナー」を増やすだけでは、なかなか伸びない

専業ツールベンダーがパートナー戦略を始める際、よくあるのが、

「自社サービスを販売してくれる会社を増やそう」

という考え方です。

もちろん、販売チャネルを増やすことには意味があります。

しかし、これだけではパートナーが増えても、なかなか案件が増えないことがあります。

契約時には、

「ぜひ一緒にやりましょう」

となる。

ところが、その後、

「何か案件があれば紹介します」

で止まってしまう。

これは、パートナー側からすると、自社の商品を新たに覚えて、営業して、提案する理由が十分にないからです。

特に専業ツールの場合、パートナー企業側にも既に複数の商材があります。

その中で、

「なぜ、あなたのサービスを提案するのか?」

が明確になっていなければ、自然に案件が生まれることはなかなかありません。

「売ってもらう」から「一緒に売る」へ

そこで重要になるのが、パートナーに単純に販売してもらうのではなく、

「一緒に売れるものをつくる」

という発想です。

例えば、

MA × 会員基盤

ポイント × アプリ

決済 × CRM

AI × 顧客データ

など。

一社の商品をもう一社が販売するのではなく、

両社のサービスを組み合わせることで、初めて成立する提案

をつくります。

そうすると、パートナー側にもメリットが生まれます。

自社だけでは提案できなかった案件に入れる。

既存顧客に新しい提案ができる。

自社サービスの価値も高められる。

新しい市場にアクセスできる。

つまり、

「あなたの商品を売ってください」ではなく、「一緒にやった方が、お互いのビジネスが広がる」

という状態を作ることが重要です。

顧客課題から逆算すると、組むべき相手が見えてくる

では、どのような企業と組めばいいのでしょうか。

私は、まず「自社と相性の良さそうな会社」を探すのではなく、

顧客課題から逆算する

ことが重要だと考えています。

例えば、ある企業が、

「アプリの利用者を増やしたい」

と考えているとします。

この課題に対して、アプリベンダーだけで考えると、

「アプリを改善しましょう」

という提案になります。

しかし、顧客の課題をさらに掘り下げると、

  • 会員データを活用できていない
  • 購買データと連携できていない
  • ポイントを活用したい
  • 顧客ごとに情報を出し分けたい
  • キャンペーンの効果を測りたい

といった課題が見えてくるかもしれません。

そうすると、

アプリ × 会員基盤 × ポイント × MA

という複数企業によるソリューションが見えてきます。

ここで初めて、

「では、誰と組むべきか」

という問いが出てきます。

私自身が経験した「専門性の組み合わせ」

私自身、現在の会社で様々な領域の企業とパートナーシップを構築してきました。

例えば、金融機関が展開するBaaSに対して、当社が得意とするスマートフォンアプリの企画・開発・グロース支援や、アプリに組み込むマーケティングソリューションを組み合わせ、共同で顧客へ提案する取り組みです。

金融機関には金融サービスやBaaSという強みがある。

当社にはアプリやマーケティングという強みがある。

それぞれを単独で売るのではなく、

「組み合わせることで顧客にどんな新しい価値を提供できるか」

を考える。

結果として、実際に複数の案件を受注し、サービスとしてリリースするところまでつなげることができました。

また、流通・小売領域で事例ができ始めていたO2Oという考え方を、金融業界向けに再構成してパートナー企業に企画として持ち込み、共同で展開した経験もあります。

ここでも、既存の商品をそのまま販売したわけではありません。

既存の知見を別の市場の課題に当てはめ、パートナーと新しい提案を作る。

このような取り組みが、新しいアライアンスのきっかけになります。

「競合になるかもしれない会社」とも組めるか

専業ツールベンダー同士で協業を考える際、避けて通れないのが、

「この会社は将来的に競合になるのではないか」

という問題です。

確かに、すべての企業と無条件に組めばよいわけではありません。

ただし、顧客課題を分解してみると、競合でありながら補完関係を作れるケースもあります。

例えば、

A社は顧客データに強い。

B社はMAに強い。

C社はポイントに強い。

D社はアプリに強い。

それぞれが単独では競争する部分を持っていたとしても、顧客から見れば、

「全部必要」

ということがあります。

その場合、

「どちらが顧客を取るか」

ではなく、

「どうすれば一緒に大きな案件を作れるか」

という発想に変えることができます。

もちろん、商流、顧客情報、利益配分、責任範囲など、事前に整理すべきことはあります。

しかし、最初から「競合だから組めない」と決めてしまうと、大きな機会を失うことがあります。

パートナーシップでは「会社」だけでなく「人」を見る

もう一つ、私が大切にしていることがあります。

それは、会社同士だけでなく、人同士の関係をつくることです。

50社を超える企業とのパートナーシップを構築してきましたが、契約書だけで活性化したパートナーはほとんどありません。

むしろ、

  • 一緒に顧客へ訪問する
  • 両社で勉強会を開催する
  • 営業だけでなく技術・企画担当者も交流する
  • リアルの場で懇親会を行う
  • お互いの会社やサービスを理解する

といった活動を重ねることで、

「この案件なら、あの人に相談してみよう」

という関係が生まれてきます。

パートナーシップを動かすのは、会社の戦略だけではありません。

「この人と一緒に仕事をしたい」

と思える関係が、実際の案件を生むことも多いのです。

0→1の次は「1→10」

アライアンスでは、最初の1件を作ることが非常に難しい。

しかし、1件できれば、それを「型」にできる可能性があります。

例えば、

「この業界で売れる」

「この顧客課題に刺さる」

「この組み合わせなら提案しやすい」

ということが分かる。

そこから、

1社の成功事例 → 複数顧客 → 複数パートナー

へ展開していきます。

私自身も、パートナープログラムを0→1で立ち上げた後、パートナーを50社超まで拡大し、実際に複数の共同案件・売上につなげてきました。

さらに、アライアンスを自分一人の活動にせず、社内のメンバーを増やし、パートナー開拓や協業推進のやり方をチームに広げてきました。

つまり、

0→1で仕組みを作る。1→10でパートナーと成果を増やす。そして、組織として再現できるようにする。

ここまでが、アライアンス戦略だと考えています。

「パートナー企業数」ではなく「新しい市場」をKPIにする

専業ツールベンダーがアライアンスを考える際、

「今年は10社パートナーを増やす」

という目標を置くことがあります。

もちろん、それ自体は悪いことではありません。

ただ、最終的に目指すべきなのは、

パートナー数の増加ではなく、パートナーによって自社の事業領域が広がること

ではないでしょうか。

例えば、

「今まで入れなかった業界に入れるようになった」

「大手企業との取引が増えた」

「自社だけでは獲得できなかった大型案件を受注できた」

「新しいソリューションを作ることができた」

「既存顧客へのクロスセルが増えた」

こうした成果こそ、アライアンスの価値だと思います。

「自社の弱み」は、パートナーにとってのビジネスチャンスかもしれない

専業ツールベンダーにとって、

「自社には○○がない」

ということは、必ずしも弱みではありません。

むしろ、

「○○に強い企業と組む余地がある」

ということです。

自社がすべてを持つ必要はない。

自社がすべてを作る必要もない。

大切なのは、

自社が何に強く、何が足りないのかを理解し、その足りない部分を持つ企業と組んだときに、どんな新しい価値が生まれるのかを考えること。

その視点に立つと、アライアンスは単なる販売チャネルではなく、事業を拡張するための経営戦略になります。

おわりに

MA、ポイント、会員管理、決済、CRM、セキュリティ、AIなど、専門性の高いツールを提供する企業は、今後ますます重要になると思います。

一方で、顧客企業の課題は複雑化しています。

一つのツールだけで、すべての課題を解決することは難しくなっています。

だからこそ、

「自社だけで完結させる」のではなく、「自社の強みを軸に、他社の強みを組み合わせる」。

その発想が、専業ツールベンダーの次の成長につながるのではないでしょうか。

私自身、これまで50社を超える企業とのパートナーシップを構築し、プロダクトのストック売上だけでなく、数千万円~億円規模の受託開発案件、コンサルティング案件、プロモーション支援案件など、様々な形でパートナー経由の売上拡大に携わってきました。

単に「パートナー候補を紹介する」のではなく、

「誰と組むのか」「何を一緒につくるのか」「どう最初の1件を作るのか」「どう1→10へ広げるのか」

まで考える。

それが、私がこれまで実践してきたアライアンス戦略です。

「自社ツールだけでは足りない」

そう感じたときこそ、もしかするとそこに、次の成長のヒントがあるのかもしれません。

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